農業生産者からは「クリーンな炭材から作った木炭が安く手に入ったら、いくらでも土壌改良資材として使いたい」、 木炭生産者からは「林地残材で木炭を生産するには、炭材も有償だし、品質の良い木炭を生産するにはそれなりのコストがかかる」というご意見を伺っています。
林地では間伐材をはじめとする多くの森林バイオマスが市場性に乏しいために残材として放置されているのが現状で、 この林地残材は豪雨時等には2次災害リスクにもなっています。森林バイオマスはクリーンな炭材であり、木炭としての資源化が経済活動として定着できれば、 森林環境保全に多大な貢献をすることになります。また、一部の農地では過剰な化成肥料の施肥で微生物性の低下と共に土が痩せていく傾向にあります。 木炭は土壌の物理性と共に微生物性を向上させる土壌改良資材であり、木炭施用の普及は農地環境保全に大きな貢献をすることになります。
木炭の利用拡大に向けては、木炭の多段階多目的利用、林業と連携した炭材の集材と炭化方法、付加価値農作物の生産、 カーボンクレジット化の4項目の実現が経済性を確保するための大きな推進力になります。
 
木 炭
半世紀ほど前までは、クヌギ・コナラなどの広葉樹を炭材にした木炭が燃料用として各家庭で普通に使われていました。 近年では、広葉樹の木炭より表面積が大きいスギなどを炭材とした木炭が農地の土壌改良資材などに利用されています。

木炭の種類(林野庁ホームページ)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/mokutan/syurui.html
木炭の性質(林野庁ホームページ)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/mokutan/seisitu.html
生産動向(林野庁ホームページ)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/tokusan/8.html

 
炭化炉
木炭は、炭材を「熱分解」することで生産されます。すなわち、空気の供給を抑えた不完全燃焼させると有機物等分解して排ガスとなり、木炭が固形物として後に残ります。 完全燃焼ではありませんので、排ガス中には温暖化係数がCO2の21倍のメタンガスが約20%含んでいます。また、炭化プロセスの熱源を化石燃料に依存すると、その分のCO2が排出されることになります。 2次燃焼装置付内熱式連続炭化炉は、メタンガスの大気への排出を抑え、化石燃料の使用を最小限に抑えることができる炭化装置です。
2次燃焼装置付内熱式連続炭化炉
  • ① チップ状の炭材がベルトコンベアで炭化炉に連続投入され
  • ② 空気の流入が制御された炭化炉で熱分解され、木炭が右端から連続的に出てくる
  • ③ 2次燃焼された排ガスは炭材の乾燥に利用されている。
2次燃焼装置付内熱式連続炭化炉
②内熱式連続炭化炉
炭材の一部が燃焼して炭化プロセスの熱源になりますので、化石燃料の使用は炭化炉の着火時のみで、その後は自燃で木炭が生産されます。 なお、昔ながらの炭化炉はバッチ生産のため生産性が低く、しかも品質を一定に保つことが困難ですが、 連続炭化炉では炭化温度、炭材形状、炭化時間をコントロールすることで安定した品質の木炭が連続して生産できます。
③2次燃焼装置
炭化炉で発生するCO2の21倍の温暖化効果を持つメタンガスを完全燃焼させる装置です。